【歴史が嫌いな人は飛ばしてください】   熊野王国編 完結    その1)(その2)(完結)


 日前(ひのくま)神宮。第一印象は「違和感」。しかもすごい違和感だ。
 祭神である日前大神は、天の岩戸事件の事件解決のお祝いに造られた「鏡」。つまり岩戸事件関係だ。
エピソードを持たない割に高い格式。これも違和感の1つだけど、何よりも場所だ。「なぜココにある?」だ。
天岩戸は高千穂だったり伊勢だったり戸隠だったり、いろんな場所に点在する伝承だけど、和歌山ではない。
なぜ和歌山のココに、そんな神様が誕生したのか。コレが最大の違和感の原因だ。

 「ひのくま」と言う名前。コレを「火の神」と読めばまた違う解釈もあるが、順当に言えば「ひ」は「日」で
アマテラス大神のシンボル、「くま」はそのまま「熊野王国」だろう。2国の国境線上にある、2国の国名を
冠した神宮。ここに意味が無いはずが無い。この地で間違いなく何かのイベントが起きている。それが
天岩戸事件だとすると、天岩戸事件は単なる皆既日食ではなく、別の政治的事件だ。

 天岩戸事件は「引きこもったアマテラス大神を力づくで引きずり出した」という話だ。コレが国家間のイベント
をデフォルメ、擬人化したモノと考えると、国家間でのイベントは「ヘソを曲げたヤマト朝廷を、力づくでねじ
伏せた」という構図になる。じゃあ誰が、となると、その相手はやっぱり熊野王国だ。ココは熊野領だし、
思兼命や和歌山人の始祖・国懸大神が合祀されてるし、何より記念品の日前鏡、コレは熊野のシンボル
八只鏡を真似して作らせたモノだろう。部族の象徴である祭器を作らせた、となると、これはヤマト朝廷に
とって相当屈辱的な結果だ。かなり屈服的な外交が行われたんじゃないか、と考えられる。「岩戸」を
「篭城戦」とも読めるが、熊野領だしそれは薄いだろう。こう考えていくと「何のエピソードを持たない神宮」
という違和感も解消できる。この神宮は外交の記念モニュメントだ。



 つまり。 天岩戸事件とは。

 クマノ民族による、 ヤマト民族の、 屈服外交。

 皆既日食は政治不安、 日前神宮はモニュメント、 日前鏡は降伏の証拠品。



 当然、ヤマト民族は滅亡していない。今現在でアマテラス大神が最高神をやってるからだ。しかしクマノ
民族に併呑もしくはそれに近い抑圧を受けた。そしてその後どこかで逆転現象が起き、クマノ民族のほうが
消えた。混じり合い1つになったか、どこかで葬り去られた。そんな所だろう。

 うーん。いけるいける。話が繋がるよ。



 こう考えていくと、スサノオの人物像がまるで変わってくる。岩戸引きこもりの原因を作ったスサノオ。
熊野の主神・家津御子大神と合体してるスサノオ。スサノオは、アマテラス大神の出来の悪い弟なんて
かわいい存在じゃない。もっと敵性の濃い人物だ。それでいて古事記の準主役的な地位を持ってるの
だから、ヤマト民族に取り込まれた敵性国家、この辺が自然だ。熊野王国がスサノオか、それとも別の
強大国家がスサノオか、それとも敵性国家を全部ひっくるめてスサノオか。
 いずれにしろヤマト民族内の異端派、程度じゃヌルい。スサノオは敵国だ。なら、古事記にあるアマテラス
とスサノオが交わる接点。そこにヤマト朝廷の対外交渉そして勢力拡大の歴史がある。

 ここで御誓約八柱神伝承に目を移してみる。
 御誓約八柱神 : うけい‐はっちゅうしん

  ある日アマテラス大神がスサノオをこっぴどく説教し、「もう悪さしないよ」と誓わせた話。
  この時契約の証に交換した神器から5男3女の8人が生まれた(天津彦根、市杵島姫など)。
 

 コレは、アマテラス大神とスサノオの立場が確定した事件だ。このシーンのスサノオにクマノ民族を当て
はめると、ヤマト民族がクマノ民族を逆転した事件と取れる。さらに八柱神まで視野を広げると、八柱神は
今の所まだ天津彦根命(三重県人の始祖)1人しか見てないが、部族神だ。ならこの事件は8大部族+
アマテラス民族+スサノオ民族の古代連立政権の中で、アマテラス民族が単独首位を取った事件じゃない
かとも見えてくる。もしくはヤマト民族がスサノオ民族と単独トップの座を奪い合った、かだ。とりあえずこんな
方向でいけそうな気がする。



  ・天岩戸事件により、ヤマト民族は、クマノ民族の支配下に置かれた。
  ・御誓約事件により、ヤマト民族は、連立政権の首座を取った。



 まだ見てない地域も多いし選択の幅も多すぎるけど、とりあえずこの考えを軸に今後の調査をして行こう。
 次の課題はスサノオだ。島根まで行けるかなぁ・・・。